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クラフトビールとは?

最近テレビ、雑誌、レストラン、酒屋などで聞いたり見かけたりする言葉「クラフトビール」。『これは一体何なのか?』『今まで飲んでいるビールと何が違うのか?』そう疑問に思う方はかなり多いのではないでしょうか。
短く簡単にまとめてしまうと「キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーなどの大手ビール醸造所(以後ブルワリー)ではない、小規模で大手に属していないブルワリーが醸造するビール」のことをクラフトビールと呼びます。

ただ、ここで疑問が。
「何を基準に小規模と呼んでいるのか?」
さらに、最近日本でニュースになったのが、日本を代表するクラフトビールブルワリー「ヤッホーブルーイング」と「キリンビール」の業務提携。
では、「ヤッホーブルーイング」のビールはもうクラフトビールと呼べないのか?

実は、これらの疑問には明確な答えがないのです…

例えば、サッカーはFIFA(国際サッカー連盟)という組織が世界で共通のルールなどを定め、全世界で遊ばれているサッカーというスポーツの統一化をしています。
ですが、ビールにはこのような国際組織がありません。各国に組合や組織があり、そこで定めている基準や認識が異なっています。これが非常にややこしく、明確の答えがでない理由です。

せっかくなので、クラフトビールについてもっと知りたいという方にちょっとしたビール雑学です。

①クラフトビールと地ビールの違い

『クラフトビールと地ビールって違うの?』という質問をよく聞きます。クラフトビールと地ビールは同じです。人によって、会社によって、呼び方が違うだけです。ただ、これには歴史も絡んでいます。ということで、歴史についても少し触れてみたいと思います。

②日本のクラフトビールの歴史

-規制緩和でクラフトビールの幕開け-

日本のクラフトビールの歴史は、実はそんなに長くありません。1994年に規制の緩和によって、ビールの製造免許を取得する際に必要な年間最低製造数量の基準が、従来の2,000,000リットルから60,000リットルに変更されたのです。今まで2,000,000リットル(2000キロリットル)という大きなハードルがあったため、誰もがビール造りの市場に参入できなかったのです。それが規制緩和によって、少量でも製造可能となり、個人・レストラン・ホテル・企業などが一斉にビール造りを始めたのです。
1995年に多くのブルワリーが開業し、ビールの提供を開始しました。多くのブルワリーの目的は、自社のホテル・レストランでの提供、町興しなど提供範囲が非常に限定されていました。「その地域・地方でしか飲めないビール」というのがほとんどだったため、「地ビール」という名前が定着しました。
今でも日本では「地ビール」という言葉が根付いていますが、現在ビールが大流行しているアメリカでは、このような小規模で醸造されているビールを「クラフトビール」と呼んでいます。そしてこの「クラフトビールブーム」が今、日本にも来ているのです!
ですから、以後「地ビール」を「クラフトビール」と呼ばせてもらいます。

-クラフトビールの第1回ブーム-

さて、日本のクラフトビールの幕開けから数年(1996-2000年くらいまで)は、クラフトビールのブームが巻き起こりました。「珍しい」「ここでしか飲めない」という希少価値から、多くの方々がその地域・地方行っては、地ビールを飲みました。ですが、重要な部分が追いついていなかったのです。それは、肝心の「味」です。ブーム到来後、徐々にビール愛好家などは気づいたのです。『珍しいけどたいして美味しくない』そして『美味しくないのに、値段が普通のビールより高い』と。

製造免許が取りやすくなり、多くの個人や企業がビールの醸造を開始しました。しかし日本には技術・設備・知識がほとんどないうえに、原料となる良質な麦芽とホップが少なかったため、美味しいビールを作ることができなかったのです。そこで徐々にクラフトビールのブームが沈下し、一旦は消滅寸前の産業となってしまったのです。

-アメリカのクラフトビールブーム-

しかしここ数年、またクラフトビール産業が日本で盛り上がり始めました。
大きな理由の一つはアメリカです。現在アメリカでは、クラフトビールの大ブームが来ています。7~8年前までは大手のビールしか陳列していなかったスーパーやコンビニに、ここ最近は大手のビールを探す方が難しいくらいクラフトビールが陳列されています。それは飲食店も同じで、大手のビールを提供するよりクラフトビールを提供するお店の方が多くなっています。
現在、アメリカの大手ビールメーカー(バドワイザー、クアーズ、ミラーなど)は倒産の危機にさらされ、他のメーカーなどに買収されたり、必死にクラフトビールメーカーとの提携を結んでいる状況です。
なぜこのような状況が起きたのでしょうか?
理由は様々ですが、最も大きな理由は、大手のビールが醸造するビールの種類(スタイル)が少なく消費者が飽きた、というところにあります。大手のビールメーカーは、日本もアメリカも基本同じですが、「ピルスナー」というスタイルを採用しています。「ピルスナー」とはいわゆる「ラガー」のことです。(ピルスナー、ラガーなどビールのスタイルについての詳しい情報は、こちらをクリック。)
それに比べて、クラフトビールメーカーが醸造するビールは、100種類(スタイル)以上あります。そして値段もピンキリなので、消費者は『いつものビール』から徐々に『いろんなビールを飲んでみたい』という考えになり、現在のクラフトビールブームへと繋がったのです。

-日本のクラフトビールブーム再び-

アメリカのクラフトビール熱が最高潮に達する中、日本も少なからずその影響をうけています。やはり「より美味しいビールを飲みたい」という欲は、日本の消費者も同じのようです。
そして第1回クラフトビールブームを経て、日本のクラフトビールメーカーは、確実に技術・設備・知識の進歩を遂げています。原料なども輸入や栽培されるようになり、ある程度確保ができるようになりました。
ここ数年、日本のクラフトビールがビールの世界大会などで賞を受賞するなど、世界的にも評価されてきています。さらに、日本産ビールの海外輸出も始まっています。
クラフトビールが飲める専門店やクラフトビールが買える専門店も増えてきており、まだまだブームと言えるほどではないですが、徐々に熱が上がっています。
ぜひ、今後の日本のクラフトビールに期待していただきたいです。

③クラフトビールの定義

最後に、クラフトビールの定義についておさらいです。
冒頭にも書きましたが、全世界で共通認識の定義というものがありません。日本でも定められた定義がないので、ある程度ベースとなっている指標を下記に記載します。これは、アメリカのあるクラフトビール組合が定めている基準です。

  • -小規模である(醸造量が大手に比べて低い)
  • -独立している(大手のビール会社などの傘下・提携などしていない)
  • -伝統を守っている(昔ながらのビール造りの製法に則っている)

もちろん、基準はもっと細かく定められていますが、日本のクラフトビール市場と合わない部分がでてくるので、簡単にまとめてあります。
『クラフトビールとはこれ!』というルールがないのもビール造る側の一つの面白さだと思います。

今後、クラフトビールがさらに人気になっていくにつれて、日本に存在するクラフト(地ビール)協会・組合などが基準を設定してくると思いますが、それが日本のクラフトビールの飛躍を妨げるのではなく、さらに広げる基準であることを願います。

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